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自律的な化学物質管理のキホン (2024年中災防「安全衛生のひろば」連載記事を基に記載) バックナンバーはコチラ
最終回:自律的管理を成功に導くために
自律的管理の連載も本稿で最終回です。全体を振り返りつつ、成功のためのポイントを考えます。
<自律的管理の最重要点のおさらい>
自律的管理においてカギを握るのが、責任の所在だと考えています。収益を上げるなど会社の便益を得るために、安全衛生リスクを伴う化学物質の使用を自らが選択して企業活動を行っているのですから、安全衛生リスクに対する責任は、自分にあるという意識をしっかり持つこと、そして、その安全衛生リスクは、「ヒト」という貴重な会社の財産を失い、その結果、操業や持続的な会社運営に支障を来すというという経営リスクであり、安全衛生活動は、その人財を守るための投資であると考えることが、自律的管理の根幹だと思います。投資であるからこそ、限られた経営資源をどのように配分するかが重要になるため、リスクアセスメントを行い、高リスクから優先して安全対策を進めることがポイントでした。ですから、自律的管理での最重要キーマンは、事業の責任を負う、会社や事業場のトップであり、その意識とリーダーシップが自律的管理の成否を握るといっても過言ではないでしょう。
<自律的管理のルールの設計の大切さ>
化学物質の自律的管理では、リスクアセスメント対象物を製造または取り扱う事業場では、化学物質管理者と保護具着用管理責任者が選任されて、自律的管理の技術的な事項を進めることになります。技術的な事項とは、事業場で使用されている化学物質とその危険性・有害性の把握、リスクシナリオの洗い出しとリスクの見積もり、許容できるレベルまでリスクを低減、健康診断によるフォローという一連の流れでした。これらを、化学物質管理者が変わっても、将来にわたって確実に持続的に自律的管理を進めるためには、まずは、自律的管理で実施すべきことを、事業場の規程・基準・要領・手順書などの文書の中に落とし込み、ルールを明確にする必要があります。そして、これら文書はお互いに有機的に連動していなければなりません。
例えば、業務の中で、化学物質を取り扱う作業手順の変更を行う必要性が出てきたら、その情報が化学物質管理者と確実に共有され、関係者を集めてリスクアセスメントを実施する仕組みができている必要があります。その場合、手順変更の要領書と、リスクアセスメントを規定する要領書との間でも連携を図るルールを確立しておかなければ、変更時のリスクアセスメントを確実に実施することができません。また、別の例では、過剰ばく露が起きた場合には、労働安全衛生規則第577条の2第4項に基づく健康診断(以下、第四項健診)を行う必要がありますが、リスクアセスメントを規定する要領書や緊急時対応の要領書の中に、第四項健診のことを明記して、実際に異常事態が起きたときに、産業医の業務を規定する要領書等と連動して、確実に健康診断を行う仕組みを作っておかないと、実際に過剰ばく露が起きたときに、第四項健診が速やかに実施できないことになります。つまり、自律的管理が連動して行うことができるように、事業場全体の文書体系を確立することがも大切です。
<マネジメントシステムのススメ>
文書体系を矛盾なく設計するのは大変ですが、その支援になるのが、ISO45001(Occupational Health and Safety Management Sysytem)に代表されるマネジメントシステム(以下、MS)です。MSは、いわば自律的管理の包括的な設計図と言えますので、まずはMSが示す要求事項に沿って、事業場内のルールを体系化することをお勧めします。
そして、体系ができたら、PDCAサイクルを通じて、要求事項を確実に実施し、事業場全体の自律的管理がうまく機能しているかをMSのパフォーマンス評価でチェックしながら、自律的管理をブラッシュアップしていけばよいと思います(図)。
MSというと、認証取得をイメージして大変な労力を要すると考える方も多いかと思います。もちろん、認証を取ることを目的にする事業者であれば、認証取得をして維持管理をすればよいと思いますが、自律的管理を確実にすることを目的にMSを導入するのであれば、事業場規模やリスクなどの個別事情に即して、マネジメントに詳しいコンサルタント等に相談しながら、身の丈に合ったMSを自分で作り上げればよいと思います。ここでも、MSが目的化しないように、あくまでも自律的管理を確実にするためのツールであることをお忘れなく。
<連載を終えるにあたって>
最後に、作業者に対してメッセージをお送りして連載を終えたいと思います。連載を通じて、自律的管理では、事業者の責任で実施することを書いてきましたが、個々の作業者においても、自分が責任を負うという意味で、同じことが言えると思います。化学物質により健康を害することがあれば、自分の人生だけでなく、皆さんの健康を願っている家族・友人・同僚の想いを裏切ってしまうことになります。自律的管理で定められた対策は、個々人はそれを守る責務があるという意識をもって、その内容を腹落ちするまで理解したうえで、確実に実行していただき、安全・健康でお仕事をいただくことを願っています。